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蛇の舌先

「空っぽの要塞へようこそ」
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:2006:11/23/12:35  ++  「負の回廊」

 カツン カツン
 靴音だけが虚しく響く中、わたしは下りていく。
 カツン カツン

 石造りの壁をぐるりと囲う、かつて権力でもって城下を支配した先人達の肖像。
 血の粛清によって得た栄華を纏い、殺戮に燃える瞳がわたしを焦がす。
 略奪の果てに築き上げたに過ぎず、痛みは今もなお記憶され、伝えられていく。
 そう、全ては灰に還るべきなのだ。
 螺旋の果てに得たモノは、茨に覆われた城砦のみ。
 わたしは捕われているに過ぎず、結んだ実は熟れ、今、ここに落ちる。
 一瓶のワインも手に余る書物も、ついぞ芽吹く日を創る事は出来なかった。
 そう、全ては塵に還るべきなのだ。

 カツン カツン
 月明かりが虚しく照らす中、わたしは下りていく。
 カツン カツン

 「我思う、故に我有り」
 ならばわたしが永らえている理由は、どうしようも無い焦燥だけという事になる。
 それを繋ぎとめるモノは、目に見える全てから剥ぎ取った亡骸。
 宿命を揺りかごとするなら、わたしはその揺れ幅の中で蠢く業。
 その螺旋から抜け出す事は叶わない。心地よい痛み。ゆらり、ゆらり。
 ならばわたしが願うのは、せめて安らかに眠る事。
 亡霊のようにそびえ立つ古城と、喰らいつくような茨の悪夢。
 痛みは今もなお記憶され、伝えられていく。ぎりり、ぎりり。
 
 カツン カツン
 足元に跪いた漆黒へ、わたしは下りていく。
 カツン カツン

 そう、全ては灰に還るべきなのだ。
 そう、全ては塵に還るべきなのだ。

 カツン カツン
 棺に最後の釘を打ち込み、わたしは下りていく。
 カツン カツン
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