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蛇の舌先

「空っぽの要塞へようこそ」
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:2007:02/19/00:05  ++  旋律

 そうまでして奏でる情熱というのは一体なんなのだろう。

 それを始めて知ったのは、ブラックジャックの同名のタイトルの回だったように思う。
 ストラディバリウス奏者とブラックジャックが一緒の飛行機に乗った→南極(だか北極)に墜落して、ストラディバリウスを失った→奏者、指が凍傷で壊死。設備が足りず切断せざるを得なかった→救助された後、遭難者(ブラックジャック一行)を保護していたエスキモー、ストラディバリウスを発見。切断した指と一緒に埋める。確かこんな話。
 “この世に二つとない名器なのだなぁ”と漠然と思っていた。別にヴァイオリンは好きではないのだけれども、ブランドとして理解した。
 そしてそれ以上に、ブラックジャックが無力感に打ちひしがれる回として記憶に残っていたのだけれども。

 朝のNHK特集で、8年間ストラディバリウスの“復元”に腐心している職人の話を、コーヒーをすすりながらなんとなく観ていた。
 20分の1ミリ単位でストラディバリウスの寸法を測り、CGで図面を起こしてから、もっとも適した木材で削り出す、とそのプロセスを追っていく段階で、なんとなくでは無くなった。
 
 復元の工程でわかった事は、“カーヴ、ふくらみが非常に細かい”という事だった。
 通常のヴァイオリンに割かれる以上に、繊細さが求められたのであろう。20分の1ミリ単位で測らなければ復元出来ぬ程に。
 なんだかここまで来ると、“木を削りだして形にした”というよりも、“音が望んだ姿通りに削り出した”と表現した方が近いのかも知れない。
 
 そして、実際にストラディヴァリウスを所有している奏者(名前失念)に手渡して比較。
 結果は“錯覚を覚える”というモノ。“音色はそっくり”なのだそうだ。
 その先に“ただ…”がついてしまう、とりあえずの結論。

 「倍音が足りない」
 それが奏者の指摘だった。
 「音の透明感が違うんです、倍音が足りないから音の厚みも違うんです」との事。
 8年分の情熱を持ってしても、未だに届かない情熱。
 奏者が手にしていたストラディバリウスが、円熟期のモノであったという事を差し引いて尚、届かない音。
 近づけた事を誇るべきか、未だ遠い事を嘆くべきか。

 ブラックジャックが無力感に打ちひしがれた理由のうちの一つが、わかった気がした。
 それは得がたいモノだったのだ。

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